建築雑誌の新建築住宅特集では、年に一度「建築家自体からの家学び」という連載が組まれています。
毎回、建築家が自邸として設計した住宅作品を一つ取り上げ、設計者(あるいは家族)へのインタビューや対談、ゲストの建築家による評論だけでなく、大学の研究室の学生による分析も掲載されるなど、多角的に作品を明らかにしていく連載になっています。
今回、その研究室として明治大学建築計画・設計研究室が選ばれました。特集される作品は建築家・富永譲の自邸「武蔵新城の住宅」です。
最初に5月に富永さんのもとを訪ね、お話を伺った結果、この住宅が竣工当時の「近代の見直し」の潮流の中で、当時富永さんが研究していたコルビュジエや僕たちも文献ゼミで読んでいるロウなどの建築論を批評的に参照していたり、また既存家屋に増築したために既存家屋の寸法体系が踏襲されていたり、その中で一般的なものとは少しズレのある独特な寸法体系が隠れていることが見えてきました。
6月に3Dスキャナーで自邸を計測させていただき、その計測データから生成した立体視画像をもとに分析とその資料を作成。11月に富永ご夫妻、企画者の真壁智治さん、建築家の常山未央さん、新建築編集部の方々へ発表を行いました。
皆さんの反応は良好で、3Dスキャナーによる点群データを交えた発表も、普段アイレベルで見ている空間を様々な側面、断面から見ることができ、好評でした。
「武蔵新城の家」についての対談や評論、そして建築計画・設計研究室による分析は、新建築住宅特集2020年2月号の連載「建築家自邸からの家学び」に掲載されています。ぜひご覧ください。(笠原)